・ 警察における取調では、通訳を介して、警察から彼らに質問がされ、その答えが供述調書として、後の裁判の証拠となっています。ところが、この通訳に多くの不備やミスがありました。
例えば、まず、空港での聞き取りでは、ツアーガイドとして彼らを迎えに来ていた人物に通訳をさせたりしています。刑事事件の事情を聞くのに、刑事法の知識の全くない人物に通訳をさせているのです。また、その後の連邦警察での取調では、1人の通訳人が、朝9時半ころから、夜の7時ころまで、休憩はあったとしても、実に約9時間にわたる取調の通訳を連続して行っています。通訳という仕事は、大変な注意力や集中力が必要な精神労働であり、9時間も連続的に通訳をさせるのは、通訳人に無理をさせ、正確な通訳は望めません。
個々の通訳人のミスの例としては、一番大切な、「弁護士を呼ぶことができる。」ということを伝えるときに、通訳が弁護士のことを弁護士と訳せず、「えーと、法律のですね、関係した人に連絡をとりたいですか。」と訳しています。また、無料の法律扶助を意味する「
Lega aid 」について「リーガルエイドという法律に関連した組織がございますけれども、そちらに連絡をとりたければ」というようにしか訳さず、無料で弁護人についてもらえるという、大事な点を説明しませんでした。。
また、単語の間違いとしては、入国管理局と訳すべき immigration を「移民局」と訳し、聞かれた勝野光男さんが、その質問の意味を理解できなくなっている場面があります。
さらに、「あなたはそういう話をでっちあげたのか」という質問がされたのに、通訳者が、「でっちあげる」を意味する「 make up 」を、でっちあげと訳せず、「そういうふうなことだというふうに、言っただけですか」と訳してしまったために、浅見喜一郎さんは、「でっちあげたのか」という質問に、いったん「はい。」と答えてしまい、その後、もう一度確認されて、今度は「いいえ」と答えるという混乱が生じました。
さらにまた、荷物がなくなったレストランでの行動を尋ねる場面で、「レストランを出た後は何をしましたか」や「車の所に戻った時にはどうしましたか」という質問がされた際、通訳人は「レストランを離れるときに、何があったんですか」「車の所に移ったときに何がありましたか」と訳してしまい、それに対する答えが、「何もないです」となり、まるで、供述をわざと拒否しているように聞こえてしまっています。
以上はほんの1例であり、全体に、間違った訳のために、質問と答えがかみ合わず、取調べが迷路に入り込んでいる場面が多数あったのです。
このような場面をビデオで見た陪審員はどう思うでしょうか。通訳が間違っていることは、陪審員にわかるはずもありませんから、陪審員が、「勝野さんらは質問にまともに答えていない、おかしい」と誤解してしまっても不思議はありません。
通訳の欠陥が誤判を招いた大きな要因となっていることは明らかですし、このような取調べを、適正な手続と呼べるはずはありません。